ウィーン国立歌劇場の「さまよえるオランダ人」公演、主役歌手が花粉症で降板
春の訪れとともに、クラシック音楽界にも思わぬアクシデントが発生しました。ウィーン国立歌劇場で上演予定だったワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」において、タイトルロールを務める予定だった歌手が花粉症の症状により降板を余儀なくされたことが、音楽専門メディア「Slipped Disc」によって報じられました。
「さまよえるオランダ人」は、リヒャルト・ワーグナーが1843年に初演した初期の傑作オペラです。永遠に海をさまよう呪いをかけられたオランダ人船長が、真実の愛によって救済されるというロマン派的な物語で、後の「トリスタンとイゾルデ」や「ニーベルングの指環」へと続くワーグナー作品の原点ともいえる重要な作品です。
タイトルロールであるオランダ人役は、バス・バリトンの声域を持つ歌手が担当します。約2時間半の上演時間を通じて劇的な表現力と持久力が求められる難役であり、声の調子が万全でなければ務まりません。花粉症による鼻詰まりや喉の炎症は、歌手にとって致命的な問題となります。声帯周辺の粘膜が腫れることで本来の発声ができなくなり、特にワーグナー作品のような重厚な歌唱を要求される演目では、無理を押しての出演は声帯を痛めるリスクも伴うとみられます。
ウィーン国立歌劇場は、世界最高峰のオペラハウスの一つとして知られ、年間を通じて300回以上の公演を行っています。このような突然の降板に備えて、主要劇場では通常カバーキャストと呼ばれる代役歌手を用意していますが、今回の公演でどのような対応がとられたかについては、続報を待つ必要があります。
興味深いのは、この時期のウィーンでは花粉の飛散がピークを迎えることです。特にシラカバやハンノキなどの花粉が多く飛散し、現地では多くの人々が花粉症に悩まされています。屋外で過ごす一般市民だけでなく、繊細な体調管理が求められる声楽家たちにとっても、春は油断できない季節といえるでしょう。
今回の一件は、華やかな舞台の裏側で歌手たちがいかに繊細なコンディション管理を強いられているかを改めて浮き彫りにしました。オペラファンとしては、アーティストの健康回復を願うとともに、代役歌手の熱演にも期待したいところです。
出典:Slipped Disc / The Violin Channel / OperaWire / WQXR などの海外主要メディア