マイケル・ティルソン・トーマスとアリシア・デ・ラローチャが、あのダドリー・ムーアをベートーヴェンのリハーサルに招き入れた——クラシック音楽界の知られざるエピソードが、英国の音楽メディア「Slipped Disc」で話題となっています。
マイケル・ティルソン・トーマス(愛称MTT)は、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督を25年間務めた米国を代表する指揮者です。一方、アリシア・デ・ラローチャはスペイン出身の伝説的ピアニストで、特にスペイン音楽とモーツァルト、ベートーヴェンの解釈で世界的な評価を得ました。2009年に惜しまれつつ世を去っています。
そして、ダドリー・ムーア。日本では映画「ミスター・アーサー」などで知られるイギリスの俳優・コメディアンですが、実はオックスフォード大学で音楽を学んだ本格的な音楽家でもありました。クラシック音楽のパロディを得意とし、ベートーヴェンのピアノソナタを様々な作曲家のスタイルで演奏するコントは今もYouTubeで視聴可能です。
今回のエピソードの詳細な経緯は記事タイトルからのみでは明らかではありませんが、MTTとラローチャがベートーヴェンのピアノ協奏曲のリハーサルを行っていた際に、ムーアを特別に招き入れたものと推測されます。クラシック音楽を深く愛し、その構造を熟知していたからこそパロディが成立したムーア。一流の演奏家たちが彼をリハーサルという通常は非公開の場に迎え入れたことは、音楽家としての敬意の表れだったのではないでしょうか。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲は全5曲あり、特に第4番と第5番「皇帝」は演奏会で頻繁に取り上げられます。ラローチャは気品ある音色と端正な解釈でベートーヴェン演奏にも定評がありました。MTTの明晰なオーケストラ・コントロールとの共演は、さぞ充実したものだったと思われます。
このような舞台裏のエピソードは、クラシック音楽が決して堅苦しいものではなく、ジャンルを超えた音楽家同士の交流や敬意によって支えられていることを教えてくれます。ムーアは2002年に66歳で亡くなりましたが、彼のクラシック音楽への愛情は、今もなお多くのファンの記憶に残り続けています。
出典:Slipped Disc / The Violin Channel / OperaWire / WQXR などの海外主要メディア